んん、んー? ん、あっ、これで繋がってるんですの?
んん……まあよいですわ。
私は通信機の前で話せと言われただけですし、繋がっていようがいまいが義務は果たせますわ。
異世界の皆さん、ごきげんよう。
私、帝女官(みかどじょかん)を勤めております、史羅〆(しら しめる)と申します。
通りすがりのサイコロ人間の頼みで、皆さんに私の世界の情報を教えてさしあげることになりましたので、今後は心して聞いて下さいましね。
まずは自己紹介から参りますわ。
先ほども申しましたが、私の名前は史羅〆。
代々帝女官を勤めてきた名家、史羅家の長女ですの。
え? なんですって? 「変わった名前」?
「しめるって……卑猥じゃね?」ですってええ!?
また言われっ……いいえ、無礼な!
そんなことを言う下賎の輩には、情報など教えてさしあげません!
即刻、画面を閉じて通信機の電源を切って泣き寝入りをなさい!
ん……「〆ちゃん」と呼んでよいか、ですか?
こほん、んんっ……そうですわね。
私は職場では「史羅さん」、他では「史羅のお嬢様」と呼ばれておりますの。
皆さんもそのようになさるとよろしいでしょう。
次に、私の大切なお仕事、「帝女官」についてお教えしましょうか。
帝さまについては、いかに異世界の皆さんといえど、その素晴らしさをご存じですわよね。
ええっ? まさか……知らないとでも? それは不勉強に過ぎますわ!
すぐに「登場人物」の項目をご覧なさいな!
「日本帝国」の登場人物を見れば、そこに、そこに帝さまがっ……!
……まあよいですわ、ここでもお姿をお披露目してしまいましょう。
んんっと……これで映るかしら。
さあご覧なさい! このお方が当代の帝さまであらせられます!
ああっ……もうっ……なんて神々しく、お可愛らしいんでしょう!!
お素敵すぎますわ、帝さまっ……あっ、いいえ! 帝さまに限られては、どんなにお素敵でもお素敵すぎるなんてことはありませんでしたわ! 妥当です!
はあ、帝さま……帝さまにお仕えできるなんて、私、なんて果報者なのでしょうか。
〆は、〆は、幸せですっ……
SP「…………」
はっ……ああ、私としたことが。
敬愛する帝さまのお姿に、つい取り乱してしまいましたわ。
まあ、帝さまのお可愛らしさを思えば当然の結果ですわね。
ありがとう、岩砕木。
SP(岩砕木)「…………」
さて、帝さまのお姿を異世界へ知らしめたところで、帝女官についてのお話でしたわね。
帝女官とは、御所で帝さまの御身回りのお世話をする大切な大切なお仕事ですの。
品行方正! 清潔第一! 有害物排除!
この方は女官長様ですが、私も勤務中はこのように、ひっつめのカツラをつけ、気の緩みが決して無いよう、心して臨んでおりますのよ。
もちろん勤務中には護衛の岩砕木はついておりません。護衛は私的な時間のみ。
そもそも岩砕木は御所には入れませんし。
あ、ちなみに女官長様のおぐしは地毛ですわよ。
御所というのは、代々の帝さまのお住まいですの。
このように、たいへん立派なビルヂングなども含む、巨大な建造物ですのよ。
日本帝国の要であらせられる帝さまは御所のお外には出られませんので、お住まいや会議場の他に、帝さまが余暇を楽しまれる為の温泉やゲェムセンタァ、図書館なども備わっておりますの。
我が史羅家では、ゲェムセンタァに出入りすると不良になると教わったものですが、帝さまに限られては不良になどなられるはずもありませんから、心配無用ですわ。
もっとも、帝さまはあまりゲェムセンタァにはお越しにならないとのこと。
温泉と図書館はお気に召しているようですわ。
ああ、いつか私もご一緒に…………いっ、いえいえ! 畏れ多いことでした。
御所には大勢の帝女官が勤めており、帝さまの御身回りのお世話から広報まで、様々なお役目を果たしておりますのよ。
こちらは御所の中にある会議室ですわ。
日本帝国の最高決定会議「御前会議」は、このお部屋で行われますの。
この国のすべてのことをお決めになる権限をお持ちの帝さまですが、当代の帝さまは多数決を重んじていらっしゃるので、四大長官を集められて意見を募られますのよ。
なんとお優しいのでしょう!
もちろん、議題によっては、帝さまが独断でお決めになられます。
帝さまのなさることにお間違いはございませんから、何の問題もありませんのよ。
なんとお賢いのでしょう!
……ああ、四大長官というのは、
国内の政治経済を担当する「内務長官」
外交や諜報など諸外国への対応を担当する「外務長官」
陸軍司令部、惑星上の軍事行動を担当する「陸軍長官」
海軍司令部、宇宙空間での軍事行動を担当する「海軍長官」
の四名ですの。
私たち帝女官以外で帝さまのお目にかかれる、数少ない幸運な者たちですわ。
こちらが日本帝国の主星・惑星日本の首都ですわ。
異世界の皆さんの街と比べていかがかしら?
帝さまがお治めになっている街ですもの、素晴らしく映ることでしょう。
この首都には、御所や国会議事堂、海軍と陸軍の司令部も存在しておりますの。
そうした国の中心でありながら、緑が豊かで古来からの建物も多く、風情ある古都として国際的に知られておりますのよ。
他に、温泉と電気街も有名ですわ。
あ、もちろん、我が史羅家の屋敷もこの首都にありますのよ。
ふう……まあ、これで帝女官のことは大体理解して頂けたかしら。
私は帝女官としてお仕えするようになって二年目、残念ながら、女官としてはまだまだ新人なんですの。
けれども、帝さまを敬い、お慕いする心は誰にも負けませんわ!
故に、国際情勢が不穏な昨今、帝さまが相対される諸外国がどんな国なのか、気がかりで気がかりで……私的な時間を使って調査しておりますの。
それを、通りすがりのサイコロ人間に見出され……異世界の皆さんに教えてさしあげようという次第ですわ。
なんでも「不定期更新」だそうですが、次回はこの世界の基本的な用語などを教えてさしあげます。楽しみにお待ちなさいませ。
それでは、ごきげんよう。