第4回
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一週間ぶりのご無沙汰なの。
皆さんいい子にしてましたか?
今週も、今年の闘神大会の出場者紹介をしていきまーす。
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なんで上から目線なんだよ…
ま、いいけどな。
今週も先週みたいな変態大会じゃねぇだろうな。
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あ、今週は大丈夫。
クリちゃん、レポートのお写真を見たけど、とっても普通だったよ?
戦士さんたちは。
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…たちは……
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闘神大会って武闘会だったんだねー、そういえば。
クリちゃん、再確認しちゃった。
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もういい、俺はつっこまねぇぞ、先週の後だし…
じゃあその普通の戦士ってのを見せてみろ。
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はーい。
最初にご紹介するカードは「白井カタナ vs ゲラーミン」でーす。
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緋袴の長刀使い
【白井カタナ】
美しき長刀使いとして知られる白井カタナは、同時に、禁欲的な求道者としても知られている。
その彼女が、なぜ己との戦いの場である修行場を出て、本年の闘神大会に参加したのか?
答は昨年の闘神大会に関する報道の中にあった。
「お姉ちゃん、た、大変っ……この新聞、見て!」
「どうしたのクナイ、騒がしい」
「この男……このウィング・シードマンって男、闘技会の試合で『あれ』を使ったって」
「『あれ』を…!」
十年前、幼い姉妹から父を奪った男が使っていた魔のアイテム。
それを持つ者が闘神大会の準決勝まで勝ち残ったというのだ。
シードマンは父の仇よりもずっと若く、同一人物である可能性は低かったが、父の仇を見つける手がかりには違いない。
ベスト4入りを果たしたシードマンは、来年度の大会への出場を既に表明していた。
故に彼女は同じ大会への出場を決意したのである。
なお、予選申し込みの書類を記入する直前まで、カタナは自身をパートナーとするつもりだったが、命運をともにしたいという妹の熱意に押し切られて彼女をパートナーにすることになった。
果たして美人姉妹は、仇討ちへの手がかりを得られるのだろうか?
あと、バナナはおやつに入りますか?
【ゲラーミン】
その男が出場受付に現れた時、居合わせた誰もが、床を揺らして歩み寄ってくる青銅色の巨体に呆然としたという。
その威容から注目選手になりつつあるゲラーミンだが、知られている前歴は無し。
取材班の懸命な調査も実を結ばず、まさに突如現れた彗星、否、魔法の霧を晴らして現れた山脈のような男である。
パートナーのステラ・コイルは無口な少女で、彼らの出自を語ってはくれなかった。
ただ、出場申し込みの場にいた取材班の一員は、彼女がだぶつく白衣の袖をいじりながら受付で問うた言葉がひどく印象に残っているそうだ。
「……あの……ビーム……ビームはルール違反になりますか…?」
えー、なんか青い奴は無視するとして…
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あー、切り裂きくんたら、ひいき、ひいき。
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いい、いいじゃねぇか、白井カタナ!
有名な女戦士だな。
あの白井カタナに、そんな過去があったとは…
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無事に勝ち上がって、
ウィング・シードマンさんと戦えるかな?
どうなるか楽しみだね。
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仇討ち美人姉妹の運命やいかに、ってところだな。
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イカ煮? カニ?
あっ、クリちゃん、魚介のパスタ食べたくなっちゃった。
切り裂きくん、後で連れてって。
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ごほん、えー、次のカード。
「アジマフ・ラキ vs 松本大和」だとよ。
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ねぇねぇ、切り裂きくん。
パスタパスター。
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うるせー、イカマンソーメンぐらいで我慢しろ!
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えー。
クリちゃん、やる気なくなっちゃうなー…
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くっ…
わかった、連れてってやるから仕事しろ。
(…金魚の塩辛とか食わせちゃる)
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わーい。
それでは次のレポートをどうぞ。
…クリちゃん、塩辛も大好きだよ?
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ぐっ。
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ねーちんの為に俺はやる
【アジマフ・ラキ】
剣士として修行中の熱血少年。
マフィアの台頭という暗部を抱えた町、ロックアースの役人だった彼の両親は、半年前の大規模抗争に巻き込まれ死亡した。
だが、アジマフとその姉だけは知っている。
彼らの両親は誤って刺されたのではなく、狙って殺されたのだ。
両親が掴んでいたと思われるマフィアにとって不利な何かを、彼ら姉弟は手にしていない。
それでも危険は彼らの元に迫ってきていた。
町を出て逃亡する日々の中、アジマフは闘神大会への出場を決意する。
優勝して闘神になれば、逃げ回ることなく堂々と暮らせるのだ。
「ねーちん、俺はやるぜ。俺、ねーちんには幸せになってもらいたいからよ…優勝する為には、なりふり構わねぇ! あ痛! 痛! 痛いって、わかったって、悪いことはしねぇよ!」
実の姉をパートナーに、もちろん無償労働の免除金の用意もない背水の陣。
彼はどこまで勝ち進めるのか!?
空気清浄機を取りに行く
【松本大和】
松本大和はH国の北の大地出身の冒険家である。
天涯孤独の彼はこれまで数々の迷宮や危険地帯、桃源郷などを単独行で制覇しており、H国では、その伝記が老境に差し掛かった彼の写真とともに教科書に載せられている。
そして、そこに新たな記述が追加されることは無いと思われていた。
彼は、十年前、今もって実在しないと言われている伝説のダンジョン、ダイボセー迷宮の探索に向かったまま行方不明になっていたからだ。
しかし松本大和は再び世に現れた。
本年の出場受付に、パートナーである看護婦、スノウを連れて。
容姿が以前とまるで違うことについて、彼は何も語らない。
ただ、彼が闘神区画に存在すると主張するカンダール遺跡を探索したいという出場動機を語るだけだった。
その間、スノウは「大和くんが死んじゃう!」を繰り返すばかりであった。
(なお、都市長邸広報の回答によれば、そのような遺跡は闘神区画内に存在しない)
…なんだこの緑色のは。
体が機械でできてんのか?
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あ、それ、生身らしいよ。
触ると柔らかくって、あったかくって、ペコンとなるんだって。
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軟性素材かよ!
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切り裂きくん、ゲラーミンさんは無視できたのに、
松本大和さんにはつっこんじゃったんだね。
完遂できなかったね。
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うぐ…ほっとけ。
それにしても、アジマフ・ラキは普通の戦士っぽいが…
なんか今回の連中は、パートナーがアレなの多くないか?
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そぉ?
前回もわりとアレだったよ。
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うう、来週こそは、来週こそは…!
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今週は塩辛の時間です。
あ、ちがった、お別れの時間です。
皆さん、また来週〜。
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